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絵ごよみ 漬物小屋

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僕は小、中生の頃、夏休みになると母の住む町に行き一緒に暮らした。普段は祖母が母親代わりで、二駅隣りの山里で二人で暮らしていた。祖母は父兄会なども来てくれていたのだが、クラスのみんなのお母さん達とはあまりにも歳が違うので、僕はちょっと恥ずかしかった。夏休みになると母のところに行って一緒に暮らすのだが、母は仕事なので、日中は一人で遊ぶ事が多かった。そのうち近所の自転車屋の息子やアイスキャンディー屋の息子、材木屋の息子などと友達になり、時々楽しく遊ぶようになった。そんな中、母がなぜか僕を漬物屋に連れて行った。漬物屋と言っても商店街ではなく、畑の中にぽつんとある小屋のようなところだった。そこには大小様々な樽が置かれていて、おじさん一人で商いをしていた。小屋のまわりの草むらにはキリギリスがたくさん鳴いており、丁度キリギリスを飼いたいなと思っていた僕は、翌日、一人で漬物小屋に向かった。草むらはかんかん照りで暑かったが、必死でキリギリスを追いかけた。なかなか簡単には捕まえる事は出来なかったが、ねばったお陰で何匹かは捕まえることが出来た。あまりの暑さに時々おじさんに声をかけて小屋に入れてもらうと、ひんやりとして気持ちがよく、色々な漬物の香りが小屋中に漂っていた。その時の小屋を思い出すと今でも瞬時に少年時代に戻してくれる。こんなことを個展に来てくれた岡野薫子さんに聞かれるままに話していたのだが、後に「この世は一度きり」と言う本の中で僕の絵が活字になった。
「この世は一度きり」岡野薫子(著)草思社 2010年6月1日発行





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Commented by Munehiko Nagase at 2024-09-12 19:32
面白いお話しでした。
Commented by taiyoart at 2024-09-12 20:46
ありがとうございます。
by taiyoart | 2024-09-12 01:05 | 絵ごよみ随想 | Trackback | Comments(2)

美崎太洋の油絵 明るく、楽しく、嬉しく描いている。


by TAIYO
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